慣れた兵士のように 真っ直ぐ自分を見据えた瞳 怒鳴って、怒る顔がおかしくて あのときのことを思い出すと、胸が痛む きっとあれが、甘く切ない思い出というやつなのだろう 意識の奥。その温かさ 「……………」 アスラン・ザラは、ベッドに座ったまま自分の左手を見た 右手は今、怪我のために使えないので、無視だ そのまま澄んだ翡翠色の瞳を伏せる ふ、とその腕に感じたぬくもりを思い出して、アスランは顔を赤らめた 口元を抑えて、大きくため息をつく 「俺、は……」 つぶやいた言葉は低く、染み込んでいく さっき、自分は何をしただろうか、と 脳裏に浮かんだ光景に、アスランの顔が赤く染まる 傷ついた右腕をかばい、動く左腕で、さきほど自分は何をしたか 何の前置きもなく、側で必死に自分を励ましてくれた少女 「ごめん」の一言だけで、アスランはその少女を抱きしめた 開いているのは左手だけだったが、それでも少女のぬくもりを感じるには十分だった 空に輝く、太陽にも似た金色の髪 くるくると動くのは、琥珀色をした大きな瞳 名前はカガリ・ユラ・アスハ。オーブの姫だ 姫とは程遠いほどの性格をしている彼女 平気で自分から危ない道に平気で突っ込んでいく そのくせ涙もろくて、常に誰かを優先する 「……俺は」 アスランは目をつぶる 胸の中が暖かい。手をあてると、胸元に小さな塊が当たる カガリからもらった、ハウメアの守り石だ 身体からまた、熱いものが溢れてきてアスランは慌てた 「つっ…」 思わず口元を覆う 頭を垂れ、ゆっくりと息をはいた 「何なんだ、一体…」 腕にじんわりとぬくもりが走った 抱きしめて、その暖かさを感じて、気づいたのだ 改めて、気づかされた カガリが女の子だ、ということに 初めて会った無人島で、アスランはカガリを男だと思った 乱雑ともいえる髪の切り方をしていたし、動きだって早かった 「動くな」と叫んだ声は、まだ声変わりしていないものかと思ったのだ そして ザフト兵であるアスランに対し、銃を向けて撃ってきた 押さえつけて初めてわかった、というのは失礼かもしれないが、 女にはとても結びつかなかった 「なんて、な」 アスランは苦笑してつぶやいた 見た目はそれでも、カガリはの性別は間違いなく女だ 押さえつけられたときの叫び声も、泣きそうに震える様子も、何もかも 自分が女だという意識が足りないのではないか、と思った そんな風に感じたのはカガリが初めてだった ついでに言うのなら 女の胸を押さえつけたのも、アンダー姿を見てしまったのも初めてだったりする 「……」 アスランは髪をかきあげた 変わった女だ、と思った。けれど その、彼女を あんな風に、抱きしめてしまうとは思わなかった 自分がさっき、何をしたかを思い出すと、顔が赤くなる 鼓動が早くなり、ドギマギしてしまう 「はぁ…」 ため息をついて、アスランはベッドに横たわった 額に手をかざし、目をつぶる カガリが一生懸命自分を慰めようとしてくれていた 自分の父親が死んだばかりだというのに… その表情があまりにも切なくて、胸に響いた 優しさがあふれ出すようだった 一瞬、胸についた 衝動的に、抱きしめた 柔らかなその心地に眩暈がした 焦るカガリに対し、自分は腕に力を込めた 腕の中で固まってしまったカガリは、確かに女の子だった 自分よりもはるかに小さく、柔らかく 埋めた肩口からは、クラリと香るものがあった アスランは目をつぶったまま顔をしかめた 何だ、今の思考は まるで自分が欲求不満のようではないか 確かに自分はそこら辺の青少年と何ら変わりない 通常の欲求もあれば、性欲だってないわけではない それでも軍人として、精神的訓練は受けている にもかかわらず、衝動的に行動した、なんて 同僚が知ったら、相当に驚くに違いない 唖然とするおかっぱ頭の少年を思い浮かべ、アスランは苦笑いを浮かべる そこに、シャッという電子音が響き、思考を閉鎖させる 「アスラン、ちょっといいか?」 中性的だが、どこか柔らかい声 アスランはゆっくりと身体を起こした 「カガリ」 何事もなく男の部屋に入ってくるカガリに何と言ったものか けれど、その声は自分の聞きたかった声、そのものなわけで… 「どうかしたのか?」 「あぁ、ちょっとな……」 そう言って喋るカガリをアスランは瞬きしながら聞いていた くるくると動く瞳に、ころころと変わる表情 それを見ていて、心地がいい、なんて… もっと見ていたい、なんて… この気持ちをどう表現するのか、わからない 自分でもよくわからない、初めて感じることが多すぎるから 一向に答えがでないことに悩んでも仕方がない、と それを教えてくれたのは君だから こんなこと、話せることではないけれど……… 今、胸に沈む気持ちだけ、わかっていればいい fin. 〔戯言〕 な〜、んて。アスカガ?というかむしろまたもや、アスラン独白。 アスランがいっぱいで、カガリちょこっとみたいな感じですもんね わかってますよぉっ。これもまた、何書いてんの?みたいなね……汗 何か……アスランって生真面目っぽいから、恋とか愛とか大変そうだなぁ、と サブタイトルは「アスラン、ハツカネズミになる」です。なってますよ、ね? このタイトルの方がわかりやすかっただろーに。うーむ。 アスランってこういうことに疎そう(ヒドイ)だとショウコは思ってます よって、独断と偏見からこんな話になってしまいました〜 えーっとぉ。アスラン実際、いつカガリを意識したんですかねぇ ねぇ、ねぇ????私は気になったんですが 初対面、24話の「二人だけの戦争」のアスランがやけに優しく見えましたが… あそこで惚れたとかってのはないよなぁ。いくらなんでもないよ、な? ま、こんな感じで終わっときます。強制終了、です。 |