どうしてこんなにも気になるのか こんな気持ちは知らない キラとは違う、ラクスとは違う 何かが違う こんな気持ちは君にだけで……… キスをした 死ぬかもしれない戦いの前に 初めて重ねる唇の感触 目の前に、すぐ近くに、ほんのわずかな距離に 頬を紅潮させて目を閉じる君がいた キスの意味 ザフトの正規の軍人 彼の名はアスラン・ザラ 父の命令を無視し、キラやラクス、カガリとともに戦うことを決意したのだ 戦争を終わらせたい その気持ちは皆同じ なのにどうしてそのやり方が全く違うのか どうすれば戦争は終わる? 考えた末にアスランは父とは違う道を選んだ 悩んでも迷っても負けるかもしれないと不安になっても 信じられる友を守りたいというその意志が彼を動かした 地球軍ともザフトとも敵対し、辛い立場になることは分かっていたのに アスランはあえて友を選んだのだ そして、それ以上の感情を抱く彼女を守るために 「アスランはこれからどうするんだ?」 「え?」 突拍子もなく尋ねるカガリにアスランは目を丸くした 「お前、ザフトの軍人だろ。このままここにいていいのかよ」 「…あぁ…」 今は触れたくない事実に直球に触れてこられた 父親も死んでしまった今、自分を押さえつける人物はいない だが、アスランは正規の軍人なのだ キラやカガリ、ラクスとは違う 軍人が軍を抜けることは難しい ましてや無断で、ともなると銃殺刑は免れないだろう でも…それでも…… 「今は…考えたくない」 「………」 目を背けて答えるアスランの顔色を、カガリは無言で見つめた 「そっか」 一言、まるで独り言のように言って、空を見上げる 満天の星 吸い込まれていくような感覚が、どことなく気持ちがいい カガリは思いっきり息を吸った 肺いっぱいに空気を吸って、吐いて… 「でも、決めなきゃならないときはくるんだからな!ズルズルひきずるなよっ」 まるで子どもに軽く叱るような言いぐさのカガリをアスランはポカンと見やる 途端、アスランの中から笑いがこみ上げてきた 「なっ、なんだよっ」 「いや、悪い」 「何だよ、気分悪いな」 「だから、ごめんって。」 プクッと膨れた彼女を怖いと思ったことはない 口調は男勝りで、色気も何もないのにどうしてこんなにも自分の心は惹かれるのか… そっぽを向いて腕を組み、怒っているそぶりを見せるカガリ その姿さえも微笑ましくて、アスランは目元を緩ませた 「カガリ」 そっと名前を呼ぶと、彼女は案の定ちらりと振り返る その瞬間にアスランの腕はカガリの腰を捉え、軽く引き寄せた 「っわっ、アッアスランっ!?」 一気に二人の距離が縮まる 目の前、鼻の先にあるアスランの顔にカガリはカァッと顔を赤く染めていく 「何するんだよっ。は、なせよっ」 アスランの腕の中でもがく彼女の力もなかなかのもの アスランは表情には見せないものの、その力に一層の力を込める こうなれば、男女の力の差は歴然とする 「ば…っかやろぉ〜」 その声から半ばあきらめが窺えた 眉を八の字にし、直接見ることをはばかれるアスランの瞳を見上げる ふと脳裏に浮かぶ記憶 エターナルの中で交わしたキス 死なせはしない、そう誓った そして二人は生きている キスの意味? そんなのはっきりはわからない でも、無意識に体が動いていた 人間の本能? あの口づけの意味をなすものはなんだろう キラとは違う ラクスとも違う カガリにだけ…… 「その目…、やめろよ…」 目を背けながら言うカガリに、きょとんとするアスラン ジトリとにらむような彼女の視線にアスランは何もいえなくなる 「なんか…嫌なんだ」 「何がだ?」 「っな、何が…って…」 尋ねられると困ると言ったようにカガリは不自然に目を泳がせた なんだろう、この可愛さは どうしようもなく抱きしめたくなる 強く、強く抱きしめて、いっそのこと自分の体と一体化してしまえばいいのに 「っっ」 そう思って、アスランは息を呑む あぁ、これが…… 「……ア、アスラン??どうしたっ?」 急に意識が別の所へとんだようなアスランを心配してカガリが不安げに見つめる カガリの呼びかけに、ゆっくりと視線を彼女に落とす 「アス…ラン?」 あぁ、これが「好き」ってことか 気づいてアスランは、ふっと笑った キラやラクスへの好きとは違う 抱きしめて キスして また、抱きしめて…… 「カガリが生きててくれて、本当によかったよ。」 まるで独り言のように、カガリを抱きしめながらそう言った fin. 〔戯言〕 設定は、マルキオ導師のところにいる星のはざまあたりです。 相方もそこで書いていますが、私も便乗☆ 私は戦争中はかけません。涙 やっぱり戦争がひと段落終わって、ゆっくりしてるときの自分を見つめ返すのが GOODなんですよ、私的にはっ そんなこんなで、ニブちんアスランが自分の気持ちに気付く話でした。 お粗末さまですっ(><) |