不器用でも、いい 君の言葉はそれでも俺の中に浸透していくから 君は、そのままの君でいてほしい 飾り気なく、まっすぐな瞳で、まっすぐ俺を見てくれる そんな君が愛しいんだ 君の言葉、君の存在 「?…なんだ?」 「えっ?ぁ……いや…。」 柔らかく問うその瞳に、カガリは慌てた 自分が無意識に、隣にいるアスランを見つめていたから 「?」 死なせはしないと誓った相手 そして、今、2人は生きている 死んでいたかもしれない 何かがあと一歩違っていれば、先はわからなかった けれど、今、2人はここにいる 「ありがとう、カガリ。」 「えっ?」 突然の突拍子もない言葉にカガリは戸惑う 何に対しての「ありがとう」なのだろうか 「カガリがいなかったら俺、ここにいなかっただろうから」 言われて、はっと気付いたように彼女の瞳は大きくなった ジェネシスを止めるために、ジャスティスを内部で核爆発させるときの記憶 あのときアスランの胸の内には揺るぎない決心があった 地球を救うため 大切な人を守るため そして、父の犯した罪を子である自分が償うために、と けれど、アスランの強い思いは、それをも上回る少女の言葉で大きく動かされたのだ お前は戻れと言って、カガリを突き放すようにリフターを分離した これでもうジェネシスには自分しかいなくなる そう思っていた 胸の奥がひどく痛むほどのカガリの悲痛の声が聞こえてきたのに それでもアスランは自分の決心を変えることはなかった なのに……それなのに………… 逃げるな、と 彼女はそう言うのだ 生きる方が戦いなのだ…と 戦いで失われた多くの命 死んだ者にはない未来 それを生きている者が背負う 決してそれは簡単な事ではない カガリもまた、オーブを守るためにその命を犠牲にした父を持つ そんな彼女の言葉に、アスランは強く胸を打たれた 生きる方が……戦い 死ぬことは、逃げること アスランはその手で何十何百という命を亡くしていった だから、その罪滅ぼしに自分も死ぬのだと、そんな思いもあった けれど、カガリは生きろという 明らかに泣き声とも言える声で それでも必死にアスランを止めようとする声で 「本当に……感謝している。」 苦しい思いばかりだった戦争の記憶が蘇っているのだと、カガリは気付いた 本当に、戦争というのは残酷極まりない もう永遠に戦争などなければいいのに… もう、自分が体験したような辛い思いを誰も背負って欲しくはない 「本当に、俺は馬鹿だな…」 自嘲気味にアスランはつぶやいた いつだったか、カガリが言った言葉 "コーディネイターでも馬鹿は馬鹿だ"と アスランの胸の内に、あの言葉がずっと根付いているのだと思いカガリは少々胸が痛んだ 「そんなに思い詰めるなよっ。そうやってす〜ぐアスランはマイナスに考えるんだから」 「っっ」 睨むように無防備に顔色を伺ってくるカガリ 急にアップで視界に入ってきた彼女の存在に、アスランは驚いて目を大きくした 「確かにお前は馬鹿だけど、男らしいとは思うぞっ。うんっ」 また、だ とアスランは思う カガリは励ましているのか、そうじゃないのかよく分からない言葉を言う でも、少なくともアスランにはそれが大きな安らぎとなっていた 不器用な言葉こそ胸にしみるものはない 「カガリは…すごいな。」 「え?」 何がだよ、という疑問が彼女の顔全体で表されていた けれど彼女の表情が、ふと優しい母親のようになるのをアスランは見た 「私達が………託されたものは大きいから」 「…そうだな。」 穏やかな気持ちで頷ける 今まであった大きな圧迫感というものがなくなったような気さえする これからが大変だ それでも君と一緒なら…… 「カガリ…」 「?……ゎっアスっ…んっ」 アスランはカガリの腰を引き寄せ、いきなりのキスをした 瞳を閉じる間もなくカガリは、あっけにとられる 「んんっっん、ん、ん〜」 アスランの腕の中から逃げ出そうとするカガリが必死にもがく が、アスランは離そうとはしなかった カガリがもがけばもがくほど、その腕に力がこもる 「っっぷはっっ」 可愛げのない音を立てて、カガリはアスランの唇から離れた 当然、彼女の瞳はアスランを睨んでいるわけで…… 「なっ、な、な、な、なにすんだよっっ」 「何……って、…」 「心の準備ってもんがあるだろうっ!?」 「あ、……ごめん。」 ギャーギャー騒ぐカガリに、ぽかんとしたような顔をしたアスラン 謝罪も当然、上の空な感じだ 「もう絶対するなよっっ」 「えっ?」 アスランは今パッチリと目覚めた、というような顔でカガリを見た それは……なんだ、もうキスをするなということだろうか 困った…… アスランは経過してしまった時間を巻き戻したい気持ちに駆られた 「ごめんカガリ…」 しゅんとしたアスランが、小さくつぶやく プンッと頬を膨らませたカガリが可愛くて仕方ないが、今そんなことを言ったら逆効果だろう 「…ごめん…」 アスランの小さなつぶやきが、カガリの胸にちくりと刺さる そんな顔するなんてずるいぞ カガリは横目でアスランを見やり、心の中でぼやいた どうにもこうにもほっとけないのだ しっかりしているようで、すぐ悩んで落ち込んで 一人で思い込んで解決しようとする 「違うんだ、アスラン」 そう言って、カガリは落ち込んだ表情のアスランへと手を伸ばす 前髪をサラリと軽くなで、瞳をあげたアスランの瞳をまっすぐと見つめた 「私が言いたいのは…、そういうことじゃ…なくて…」 2人の間に言葉がなくなる いや、言葉がいらないのだろう 見つめた先の綺麗な瞳 そこから伝わることが、全て アスランとカガリの距離は再びなくなった 柔らかく、甘く、優しいキス 吐息に溺れて、体温にすがる 不器用な君が、こんなにも愛しい fin. 〔戯言〕 カガリ視点に書きたいのに、いつの間にかアスラン視点に……。 裏を書こうと思うのに、いつの間にか普通の話に…。 ラブを書こうと思っても、なんだか妙な関係になり……。 この2人で裏を書くのはかなり難しいです。 お互い恋にはニブそうですし、それを本能むき出しにさせるのは至難の業っっ 精進しなければ……っっ(><) |