離れ離れになっていた期間なんてそうそう長くはないはずなのに まるで何年も引き離されていたかのように、この胸は痛む そして、焦がれる思い もう離れたくない…… 離したくない…… 離れないで…… 離れない…… もう、手に入れることに躊躇はしない だからすべてを受け止めて… キミを手に入れるまでの距離
「しばらくセイラン家にいたんだってな…。」 「っぇ?……あぁ…まぁ…。」 突然の話に、カガリは言葉がついてこなかった 視線を合わせようとしないアスラン 結果的にアスランに何も言わないまま結婚を決めてしまったカガリは今でも罪悪感が胸に刺さっていた 「ユウナ・ロマと一緒……だったんだよな。」 「え?」 「当然か…。あいつの家だし。」 自嘲気味にアスランは言って、必死に笑おうとする顔が引きつっていた 彼は何を言おうとしているのか カガリは、痛ましいアスランの姿を見つめながら必死で探った 先日よりもだいぶ普通に話せるようになったが、まだ油断はできない 彼の体はズタズタになってカガリの目の前に現れたのだ そのときの光景を思い出すだけで、言葉は喉の奥につまり、目頭が熱くなる 「あいつ…優しかったか?」 「……?アスラン、さっきから言ってる意味がよくわからな…」 「そのまんまの意味で答えてくれればいい。」 「っっ」 明らかに今機嫌が悪くなった あからさまに、口調にそれが現れて、カガリは息を呑む こんなに近くにいるのに、どうして視線がかよわないのか、それが不安で仕方ない アスランの言わんとしていることが何なのか、カガリには全く理解不能だったのだ 「セイラン家ではよくしてもらったさ。礼儀作法は厳しく鍛えられたけどな。」 「俺が言ってるのは、ユウナ・ロマに関して、だ。」 「は?お前何言ってんだよ。あいつは…」 「カガリはあいつと結婚したんだろっ」 「正式にはしてないっ!!お前だって聞いただろ、私がフリーダムに連れ去られて…」 「結婚するって言ったら、することがあるじゃないか!!俺が聞きたいのはそこだけだっ」 「っっ!?」 やっと視線が合ったと思ったら、エメラルドのその瞳は怒りを帯びたものだった それがひどく悲しくて、カガリは胸元をぎゅっと握り締める 「なんっ……だよ、アスラン。何そんなに怒って…」 やっと……やっと会えたのに、アスランはカガリを責め立てる 2人が離れ離れになっている間、いろいろなことがありすぎて、溝が埋まらない それが切なくて、悔しくて、カガリは思わず涙声になってしまった 「ユウナはウナトと行政府にいることが多いし、軍統制のための調整で忙しかったんだ。私はセイラン家から出られなかったが、ユウナと会ったのは毎回ほんの数分程度で、そのときすらまともに会話はしていないっっ」 何かの疑いがかかっている それがカガリの声を荒げていった 愛しているのは目の前のお前なのに、そんな思いとは裏腹に、アスランからの反応が冷たくてくじけそうになる 「わ…たしはっっ、お前をずっと………待って……、っぅ……ック」 嗚咽が言葉を邪魔する 視界が涙でかすんで、アスランがカガリを見上げるのも気付かなかった 離れていた間、どれほどアスランのことを思っていたか 毎日毎日、左手の薬指を見つめてはアスランの無事を祈った そして再会の日を夢見ていた ザフトに戻ったと聞いたときは驚いたが、今はアスランが目の前にいることが何よりも嬉しい けれど、自分と同じように、目の前の彼は自分のことを思っていてくれはしなかったのか 涙の止まらないカガリを、アスランはずっと見上げていた その涙の意味をアスランは痛いほど受け止めている どれほど心配をかけていたのか、彼女の涙が、それだけで語っている 「違うんだカガリ……」 アスランはポソリと小さくつぶやく 零れ落ちる涙を必死で拭い、それでも溢れようとする涙を瞬きしながら落としていった 「ただ……勇気がなかっただけなんだ……」 カガリを自分のものにする勇気が…… だから先に彼女をとられた事に愕然とした 行動を起せなかったことをひどく後悔した 欲情なんて何度したかわからない 同じ屋根の下、それまで見れなかったカガリの一面だって何度もみていた それも何もかもを見て、カガリを愛しいと思っていた けれど、その腕の中にカガリを抱くことはなかったのだ アスランの手が、震えながらカガリを求めて宙をさまよう まだ感覚が完全に戻らない彼は必死なのだろう カガリは咄嗟に、アスランの手を両手で受け止めた 途端、アスランから甘い笑みが漏れる 「嫉妬……したよ、あいつに。どうしようもなく。」 「っっ。」 苦笑して、アスランはカガリの手を力なく握り返した 「カガリはユウナ・ロマなんて選ぶわけないと、高を括ってたから。……自惚れてたんだ、俺。」 「そんなことっっ、そんなことないっっ。私は……私はずっと、お前がいてくれたからっっ!!」 カガリはアスランの手をぎゅっと抱きしめて、額に当てた こみ上げる思いがカガリの言葉を封じる 「……今度こそ、カガリをこの腕でしっかり抱きしめたい。心から、すべて。」 「アス……ラン……」 カガリの前髪を、ぎこちないアスランの指先がかすめる 前髪で隠れていた夕焼け色の瞳が、アスランのエメラルドと重なった 「その時は……、俺のすべてを受け止めてくれるか…?」 不安げに伺い、アスランは目じりを下げる そんなアスランを目の前に、カガリはもう一度アスランの手を握り返し、自らの頬に摺り寄せて微笑んだ 「うん……。」 待ってるから、早く治せよ そんな言葉が、愛おしげに摺り寄せられる手と手からアスランへと伝わってゆく 失ってから分かること 失ってから後悔すること 何故人は失うまでそれに気付かないのか 近づきすぎて見えない存在 もっと近づきたかったはずなのに、どうして近づき過ぎなんて感じるんだろう 奪われたら憤り、手をつけられたら嫉妬する キミとの距離はほんのわずかしかなかったはずなのに こんなにもすぐ傍にいたはずなのに…… もう迷わない 今、この心の傍に、まるで寄り添うようにキミを感じるから…… fin. 〔戯言〕 これは「天空のキラ」の前に書いていたものなので、妄想会話です。 実際のアスランとカガリの会話はもっと穏便なものだったので、あちゃ〜と思いましたが、 あえてアップ。折角書いたのでね♪ テレビ見て、「あら、ちゃんとアスランだってわかってるんじゃないのよ」と思いました。 クレタで再会した時はかなりイライラしてたっぽかったんですけどね。 いろいろ命狙われたりしたから心境がオトナになったんでしょうか? カガリもすっごくオトナになったような感じで。それがすごく切なくも感じて……。 あ、で、この話についてですが、思いっきりヤバめな会話です。 あの〜、この会話のないようだと、アスランが回復したら2人ヤッちゃいますねぇ。 それも書いたほうがいいのかなぁ?ネオと一緒のお部屋のアスランと?カガリが? グアッッ!!!!こ、こ、これはもしや初挑戦の「さん……(ぶおっっ鼻血がっっ)」 という冗談はさておき、まぁこれはこれで完結です。 折角2人がAAで再々会したので何かUPしたいなぁと思っただけでして。 そんでもって、アスランの男な心もちょっとだしたいなぁとね♪ 好きな女の子と恋敵の結婚という知らせは、アスランにとってすごくショックだったでしょうから 聞きたいことナンバーワンでしょう☆ という勝手な妄想から出来上がったものでした。 |