君だって辛いはずなのに ほら、胸が潰れそうな顔をしているじゃないか なのにどうして… どうしてそれでも平気そうに装うんだ? そんなこと、しなくてもいいのに 我慢することなんてないのに もっと弱いところを見せたっていいさ 俺にその小さな肩にのしかかった痛みを押し付けたって背負ってみせるから できること、望むこと、すべきこと マルキオ導師の施設に身をおいて数日 とりあえずの平和を取り戻した地球で、キラ達は施設の子供たちの世話をしながら生活していた 親を亡くし、家族を亡くした子供たち 戦争で嫌なことばかりを見てきた子供たち 塞ぎこんでしまった子もいるだろう 気がおかしくなった子もいるだろう 戦争は大切な人をいともたやすく亡くしてしまう 戦わなければ殺されるだけ、敵を滅ぼさなければ終わらない そんな戦いの定義が世界をどん底まで追いやった では今、残された者達に託されたものはなんだろう 残されたものが目指すべきところは………? 見て、聞いて、自分の中でずっと葛藤してきた思い アスランは独り自室で、遠くて近い過去に思いを馳せていた コンコンッと軽くドアがノックされる音 「心ここにあらず」であったアスランは、はっとしてそちらに顔を向けた 「はい?」 しっかりした口調で返事を返すと、帰ってきた声は彼の体温を一気に上昇させた 「カガリだ。今……いいか?」 「ぁ……あぁ。」 突然の訪問に少々戸惑いつつも回転椅子から身体を起こし、ドアへと足を進める ドアを引き、一番に目に飛び込むブロンドに近い髪 「どうした?」 さっきまで子供たちと一緒にじゃれあっていたカガリの姿からは想像も付かない真剣なまなざし 何かあったのか、とアスランは不安げに言葉を紡いだ 「あ……いや……その…」 かと思えば、ふと弱気な顔を見せるカガリ アスランから目を逸らし、困ったような顔をする こんな顔をするときのカガリは、可愛い 素直にアスランはそう思った 「ここで話しづらいなら、中に入るか?」 「あぁ。」 アスランの提案に戸惑いもなく言葉を返す いさぎよいのはいいことだが、それもどうかと思うときがカガリには多々ある とりあえず、アスランはカガリを部屋に通し、椅子に座るように促した ストンと腰を下ろすと、再びカガリは何かを決意したような瞳でアスランを見つめる 「?」 「アスランっ…私……父の後を継ごうと思うんだっ」 「えっ?」 突然本題、とも言える内容に戸惑いを隠せないアスラン 間の抜けたような声が思わず漏れる 「継ぐって……、え……、カガリ……。」 それはつまり、オーブ首長国連邦の代表となることか アスランはカガリの言葉を頭の中で整理する 「もう……決めた。」 不安はある が、やらねばならない カガリの決心は揺ぎ無いものなのだろう その証拠に、そのカガリの瞳 この瞳をしたカガリにもう何を言ってもムダだろう それならアスランにできることは…… 「俺も手伝うよ。」 「っえっ!?」 今度はカガリが目を大きくした そんなカガリに、アスランはゆっくりと近づいていき隣に腰掛けた 「アスラン……っ」 もの言いたげなカガリの瞳 困っているのだろうか 迷惑なのだろうか アスランは少しだけ不安になった 「迷惑……か?」 「そんなことっっ」 カガリは必死に首を振った が、その瞳には困惑が滲み溢れている 「だって、それじゃぁお前はっ」 「……うん…」 カガリが言わんとしていることがわかり、アスランは視線を落としてうなずく しかし、アスランの瞳もまた、揺ぎ無いものだった 「っだ、ダメだアスランっっ。そんなの……」 お前はザフトの軍人なんだろっ 痛いほど、アスランに刺さるカガリの思い おそらく、身の危険性がどれほどのものなのか一番わかっているのはアスラン自身だ それなのにカガリを守るという心 「もう…決めたんだよ、カガリ。」 自分の言葉を返されたような、言葉 胸に詰まる思いはたくさんあるのに、カガリにはそれを言葉にすることはできなかった 「アスラン……。」 「言っただろ?」 ふわりと微笑んだアスランは、そっとカガリの腰に手を伸ばす 「君は俺が守る…って」 「でもっあれはあの時でっ」 「期限なんて言ってないけど?」 くすっと笑って、アスランは戸惑うカガリを面白そうに見つめる 頬を染めたカガリを間近で見るのは久しぶりだ などと、アスランはそっと心の中で思う 「っお前はっっ……それでいいのかよっ」 顔をしかめながら見上げてくるカガリ アスランだって、そっくりそのまま言葉を返してやりたかった なんたって、カガリはまだ10代の若造だ そんな彼女が前代表の娘だからってそう易々と代表の地位につけるなどと考える方が無謀だ 任につけたとしても、背負うものは膨大に違いない 彼女はわかっているのだろうか アスランの心配などしている場合ではない 「俺は…カガリの創る世界を守りたい」 「っっ」 静かに、けれど力強く、アスランは言った 途端、カガリの瞳に熱いものがこみ上げてくる 「カガリを守る。それが、俺がすべきことだと思うから」 「っアス…ラン……」 カガリの瞳が涙で揺れる そんなカガリの頬に、アスランの手が触れる 恥ずかしさに、顔を少し背けるカガリをアスランはさりげない力でそれを食い止める 眉を八の字にして、アスランの顔を上目で窺う あぁ、やっぱりこの子は…… 「ん………っ」 アスランはゆっくりと目を閉じてカガリの唇にキスを落とした 時には強くて、突然弱くなる君だから 危なっかしくて見てられない 誰よりも優しくて、自分の弱さを知らない君だから 誰かが守ってやらなきゃいけないだろう 君の痛みを一緒に分かち合えたら、と思う だから、カガリ? 君は後ろを振り返らないで自分が思うように進めばいい いつでも俺は傍にいるから fin. 〔戯言〕 えっと?冒頭と繋がってます?つながっていないような気がするのは私だけ? えっと、本当は裏を書くつもりだったんですが……あれ?アレレ? おっかしいなぁ〜?? どこでどう間違ったのか、アスランがカガリの護衛になるまでというサブタイトルっぽいものに。 ひたすら普通のお話です。 SEEDになると相方も私もマジメさん?? いや、私は年がら年中、頭の中腐ってるから、こんな文章書くほうがおかしい。 そう、おかしいのですよっっ だって、本当は最後の締めなんて全然違うこと書いてるはずなんですもんっっ まぁ……いいや、今度の機会に書きましょう。 って、私の今度っていつでしょうか?? あぁ……裏……裏……裏書きたかった……(なら書けよって話ですけど)。笑。 |