目に眩しいほどの金髪の傍には、いつも口を閉じた護衛の姿。
彼は知らなかったのである。
何も、それさえも、苦労の末かと思っていたのだ。
素直に、そう思っていたのである。
だから、初めて彼の年齢を聞いたとき、心底、真剣に驚いたのだ。





少年は、常にそこに






「カガリ様と同い年?」


間抜けな声を挙げてしまったけど、仕方がないと思わず自分で言い訳をする。
「うるさい!」と騒ぐ同僚の様子を見て、慌てて口を告ぐんで息を飲む。


「彼はアレックス・ディノ。カガリ様の護衛をしているお方だ」


同僚の囁き声に、自分の予想がある程度あたっていたことを確認する。
「お前知らなかったのか?」と問われても、知らないものは仕方がないと思うことにする。

カガリ・ユラ・アスハ様。我が国オーブにとってはかかせない大切なお方だ。
自分も含め、この同僚もであるが、全国民の中でカガリ様にとても近い位置にいる。
そのため、カガリ様をお見かけするたびに、その隣にいる存在に目が映ってしまうのだ。
濃紺な髪に、日頃はあまり顔を上げないのだが、瞳は綺麗な緑色をしている。
女みたいな優男的イメージがあるが、一度その腕前を見て驚いたことがあるから……

要は「人は見かけによらない」と言うことなのだろう、と思った。
そう思うと途端、彼に視線が集中してしまうのである。思わず見てしまうのだ。
別に言っておくが、好意を抱いているわけでもないのであしからず。
とはいえ彼は運動神経だけではなく、感もいい。時々視線に居心地悪そうに身じろぎする。
そのたびに大慌てで視線を反らす身としては、申し訳ないがどうでもいいとも思うわけだ。





カガリ様はオーブの代表の一人であられるユウナ様の婚約者だ。
個人的にあの薄紫色の髪をした軽薄な笑みはどうにもこうにも好きにはなれない。
という、何とも個人的な感情から、これ以上の説明は省く事にする。
でもまぁ、彼としてはあの護衛の彼を邪魔者と思っていることは見ていてよくわかる。
そのたびに、彼が緑色の瞳を揺らし、端正な顔を歪める様も見てきているわけで…………。


あぁ、きっと、彼はカガリ様が大切なんだ。


そんな台詞が頭を過ぎって苦笑した。
思うのは勝手だ。ただし、相手の身分とやらがあるだけで……別にかまわないだろう。
報われないような思いで居たたまれない視線を思わず向けてしまったこともある。
ただ、カガリ様がほんの一時見せる笑顔にほっとしたように安堵する様も知っている。
カガリ様に声をかけられた途端、急に表情が幼くなるということにも驚いた。
自分達に向けられる凛とした声と、カガリ様に向けられた優しい声。
どこか、労るような愛情が常に溢れている彼の声を聞いたときには一瞬心臓が止まった。
「自分たちには労わりがないのか」と一瞬思ってしまったことは黙っておこう。

名前も、年齢も。性別しか知らなかった彼は自分のことなんて知らないだろう。
どうでもいいのだ、そんなことは。別に知って欲しいとも思わない。
ただ、カガリ様を支えているのは彼なんだろうと思ったのだ。直感的に。


「そうか…意外に若いんだなぁ」
「お前、あの髪型を見て判断したりしてねぇだろうな」


同僚の言葉に思わず吹き出した。
あぁ、確かにそうかもしれないな。
何であんな髪の分け方をしているのだろう。
もう少し前髪を作ってみてはどうか。
もともと苦労を一人で背負う男だと感じる。
何とも繊細な性格をしていることは明白だ。
あのままだったら…あの髪は…………こう言ってはなんだが、将来的に危険もあるだろう。
今度会った時言ってみようか「たまには髪型変えてはどうですか?」と。
そんなことを言ったら、絶対に不審そうな顔をされるだろうけれど……………。

わかることは、カガリ様に関しては絶対の信頼をおけるということだけだ。
今はそれだけでいい。彼はいつか、本当にカガリ様を支える人になりそうだと思うから。
ユウナ様の渋い顔を想像して、笑い出しそうになってしまった。







fin.



〔戯言〕
まぁ、傍から見たアスカガというところですが、私から見た二人ですね。
アスランは自分が大切に思った相手は、とてつもなく大切にするかな、と思いまして。
で、彼は優男ですよね、結構。というか、SEEDそのものが優男ばっかだけどさ。
たまに上げた種小説がこんな中途半端なものとは………すみませぬ。ま、いいや。